三田村元八郎シリーズ プロット 其の一
上田秀人による三田村元八郎シリーズ第一巻、"竜門の衛"のプロット。
元八郎シリーズを始める前の編集者との打ち合わせ段階ではこの様な筋書きだったそうです。
主人公・元八郎の設定が若干違っている所に注目。見比べてみると面白いです。
■仮題「終えの奉公」
シナプス
八代将軍吉宗の治世も終わりに近づいた元文元年、十九年にわたって江戸町奉行を勤めてきた大岡越前守忠相が、寺社奉行へと累進した。表向きは吉宗の股肱の臣である忠相の長らく町奉行という激務に耐えてきた報償としての栄達であるが、世間は華々しい活躍の目に付く町奉行から格は上とはいえ閑職である寺社奉行への異動ということで、大岡越前の時代も終わったと噂していた。
しかし、その実大岡越前は、吉宗の密命を受け、将軍継承に関わる重要な役目に就いたのであった。
それは吉宗の長男家重を廃し、次男宗武を擁立しようとする老中松平乗邑の陰謀を阻止することであった。既に老境に入った吉宗に乗邑たちに対抗する力はない。忠相は吉宗の命を受け、町奉行とは違い全国で権限を持つ寺社奉行に就任、忠相の栄転に伴って定町廻り同心から忠相の家臣に引き抜かれた三田村元八郎は、忠相の密命を受けて陰謀に立ち向かう。
- 第一章
- 吉宗と忠相の密談。三田村元八郎の定町廻り時代と忠相、寺社奉行への栄転に伴う引き抜き。五代将軍綱吉の法要を装った家重暗殺計画。
- 第二章
- 暗殺の事前阻止。第二段として宗武の婚約者の兄近衛内前と君で家重将軍宣下阻止計画の始まり。京都から来る勅使と対応するために奏者番兼任する忠相、勅使の意向を探るために京都へ密行する元八郎。京洛での虚々実々の戦い。家重の正室であった培子姫宮の実家伏見の宮家の尽力。
- 第三章
- 吉宗の衰弱と焦り。新年の賀の答礼使として江戸に向かう勅使の一行を負いながら江戸へ向かう元八郎。その勅使が密かに持つ天皇家の内意の手紙。それを狙う松平乗邑の手の者との戦い。
- 第四章
- 勅使江戸到着、勅使接待屋敷での最後の戦い、忠相引退、吉宗隠居、家重将軍宣下、乗邑失脚。
主な登場人物
- 三田村元八郎
- 架空の人物。元江戸南町奉行所定町廻り同心。寺社奉行忠相の家臣。
竹内小具足、十手術の達人。三十二歳、独身。 - 大岡忠相
- 吉宗の股肱の臣。名奉行として有名。町奉行を長く務めた後、寺社奉行から奏者番になる。
- 徳川吉宗
- 八代将軍。紀州家から将軍家へ。名君といわれるが、将軍継承問題で悩む。
安定した政権による独裁者と思われるが、その実将軍継承問題で敵対した勢力(尾張家など)も残存しているため老齢化とともに基盤は不安定に。 - 松平乗邑
- 吉宗政権晩年の実力者。幕府の実権を握る。
関白近衛家と結んで九代将軍を自分の力で作り出し、次期政権権力も握ろうとする。 - お幸の方
- 家重の側室。十代将軍家治の生母。家重正室培小姫の付き人として京都から来るが、培子姫死去の後、家重野側室となる。家重とは相思相愛。
- 徳川家重
- 吉宗長男。幼児期に小児麻痺を患ったため言葉が不自由である。
その為暗愚と見られるが、実は聡明である。
当初、将軍を弟に譲っても佳いと考えていたが、その裏の事情に気付き、将軍を継ぐ決意をする。 - 徳川宗武
- 吉宗の次男。
聡明で壮健であるが為に、兄家重に代わって将軍家を継ぐ野心に燃え、松平乗邑と組む。 - 近衛内前
- 前関白家久の子。宗武の正室の兄。生母の身分が低いため関白になれないでいると恨み乗邑と結んで姻威である宗武を将軍にし、その威力を用いて関白になろうとする。
- 伏見宮貞健親王
- 家重正室の父。嫁にしてすぐに娘は死亡するが、娘婿であった家重を支える。
また、朝廷で権力を伸ばそうとする近衛内前らの陰謀を憎み、姻威である天皇家を守ろうとする。 - 桜町天皇
- 時の天皇。若くして天皇になったため、天皇家の力を昔に戻そうと王政復古を夢見る。
近衛内前に利用され、幕府に反抗的な態度を取るが、伏見の宮の説得に応じ譲位することになる。 - 大岡忠光
- 忠相の一族。家重付き側用人。
ただ一人家重の言葉を理解することが出来る。忠義の人。後大名に引き上げられる。
平成19年9月22日(土)
プロット文責:上田秀人
編集:管理担当