雑記等

三田村元八郎シリーズ プロット 其の二

上田秀人による三田村元八郎シリーズ第二巻、"孤狼の剣"のプロット。
一作目と同様、実際に出来上がった作品と見比べて見ると面白いです。

■仮題「ご意見役奏上録」

シナプス

松平左近将監兼乗邑と近衛内前の陰謀が敗れ去った翌年、桜町天皇は久しく途絶えていた大嘗祭を行った。朝儀の振興と皇威の発揚を狙ったものであった。家重の行く末おもんばかった吉宗が公武合体を考えて、密かに許可と費用を与えたものであったが、これを朝廷による幕府の支配脱却の第一歩と考えた幕府閣僚は態度を硬化させ、厳しい態度に出た。直心陰流の名手徒頭曽根五郎兵営を禁裏附に送り込んだのである。

一方、長く吉宗と対峙してきた尾張藩主宗春は、ついに隠居に追い込まれていた。宗春は復讐として、家重の暗殺を尾張柳生に命じる。御殿の松の茶屋に写生に来ていた家重を尾張柳生が襲うが、蔭共として従っていた元八郎によって防がれる。

尾張柳生との戦いは戦国の宝蔵院と柳生の確執を呼び起こし、江戸柳生までもが元八郎を狙う。江戸での戦いで目的を果たせなかった宗春は、吉宗に朝敵の汚名を着せるため、尾張から柳生の精鋭を京都へ送り込み、桜町天皇の命を奪おうとする。伏見宮の急報を受けて元八郎は再び京都へ向かう。

序章
尾張徳川宗春の隠居。付け家老の反乱。
第一章
桜町天皇大嘗祭挙行。老中若年寄の反発。吉宗の気力の低下。家重の蔭共としての元八郎の働き、尾張柳生の襲撃。
第二章
江戸における尾張柳生の敗北、江戸柳生の出現、元八郎の宝蔵陰流の敗退。太捨流の修行。香織による宗春の探索。
第三章
江戸柳生との戦い、宗春の執念、吉宗による尾張家吉通暗殺の疑惑。尾張柳生京都へ。
第四章
京における幕府と朝廷の対立。尾張柳生による第一回目の襲撃。伏見宮からの連絡、元八郎の上京。江戸柳生による追撃。
第五章
京都での柳生との戦い。桜町天皇の周囲に被害、桜町天皇譲位を決意。
終章
宗春尾張にて蟄居、吉宗の隠居、家重将軍へ。元八郎と香織の婚儀。

主な登場人物

三田村元八郎
架空の人物。元江戸南町奉行所定町廻り同心。五十俵取り小普請。
宝蔵院一刀流の継承者。三十歳、独身。
大岡忠相
吉宗の股肱の臣。名奉行として有名。町奉行を長く務めた後、寺社奉行から奏者番になる。
徳川吉宗
八代将軍。紀州家から将軍家へ。将軍綱嗣問題で敵対した尾張宗春を隠居、力を持ちすぎた左近将監を排するなど家重に安定した政権を移譲しようとする。
徳川家重
吉宗長男。幼児期に小児麻痺を患ったため言葉が不自由である。
その為、暗愚と見られるが、実は聡明である。朝廷からも綱嗣を認められた次期将軍である。
自分が父の影響力の下でしか生きられないと悩む。
伏見宮定建親王
家重正室の父。嫁してすぐに娘は死亡するが、娘婿であった家重を支える。
桜町天皇の相談役。公武合体をもって姻戚である天皇家を守ろうとする。
桜町天皇
時の天皇。若くして天皇になったため、天皇家の力を昔に戻そうと王政復古を夢見る。
近衛内前に利用され、幕府に反抗的な態度をとるが、伏見宮の説得に応じ、譲位することになる。
大岡忠光
忠相の一族。家重付き小姓。ただ一人家重の言葉を理解することができる。
忠義の人。後大名に引き上げられる。
三田村順斎
元八郎の父、元町奉行所きっての腕利き同心。太捨流の遣い手。
隠居後は、吉宗の孫娘の警護役である。
三田村由
元八郎の妹、十六歳。実は吉宗の紀州時代の隠し子の娘。
吉宗の反対勢力に命を狙われるが、順斎元八郎によって護られた。
広橋兼胤
侍従。桜町天皇股肱の臣。武家伝奏として幕府との仲介を勤めるが天皇よりである。
若く再起活発な人物である。二十三歳。
村垣香織
御庭番村垣家の次女。吉宗の隠密。
柳橋芸者伽羅を隠れ蓑に江戸市中の探索を担当する。元八郎の許嫁。
尾張宗春
尾張家七代当主。長兄兄、甥、次兄の変死によって藩主の座を継ぐ。
将軍家嗣問題で吉宗が暗殺したのではないかと疑い、反発する。
柳生主膳
尾張柳生の正嫡であるが、殺人を繰り返したため廃嫡され柳生の系譜から消される。
新陰流の印可を持つ。酷薄非道な剣士。

平成19年10月1日(月)
プロット文責:上田秀人
編集:管理担当

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