雑記等

三田村元八郎シリーズ プロット 其の三

上田秀人による三田村元八郎シリーズ第五巻、"風雅剣"のプロット。
シリーズを始める前のプロットと比べるとさすがに舞台設定が固まっているだけに実際の作品との差異はそれほど無いですが、このような感じでお話を進めようとしていたのが伺えます。

■仮題「風雅剣」

あらすじ

寛延三年夏、京都を大風雨が襲う。家光が後水尾天皇の行幸をあおぐために作った二条城天守閣に落雷し炎上する。翌朝、焼け落ちた天守閣の跡を見にでた京都所司代松平豊後守は、蒼白となって天守台から降りてきた。その翌月、豊後守は京都で頓死を遂げる。その後任に田沼主殿頭は酒井修理太夫を推す。

家重から豊後守頓死の真相をつきとめるように命じられた三田村元八郎の元に黄泉の醜女と名乗る女が現れ、京へ出むくなと警告する。また元八郎が家重の命を受けたことを知った田沼は幕府伊賀組を繰りだす。

父を失い、また庇護者の一人であった桜町天皇もすでにない京に出むいた元八郎を黄泉の宮と名乗る一団が襲う。不思議なことに今回は伏見宮親王が、元八郎に手を貸さないばかりか敵に回る。伊賀組も絡んでの三つどもえの戦いを制した元八郎の前にあらわれる朝廷の闇。

序章
京で変事が勃発。元八郎へ家重からの命令。
第一章
江戸で田沼の命を受けた伊賀組と戦い、黄泉の醜女と刃をまじえる。
松平豊後守の家系の謎があきらかになる。すべてはやはり京に有りと江戸を離れる元八郎。
第二章
京にはいった元八郎をむかえた伏見宮が冷たい対応をする。
先に京についていた伊賀組先遣隊の全滅。黄泉の一団の登場。
京の旅籠に現れる家康の画像。京都町奉行所と金地院の画像を巡ってのやりとり。
第三章
元八郎の前に立ちはだかる朝廷の壁。寺社、町民、公家から成りたつ京の団結と阻害される武家の姿。伊賀組全滅を元八郎の仕業と勘違いした伊賀組の執拗な攻撃、伏見宮を通じて初めて出会う黄泉の宮。
第四章
江戸で家重が襲われる。報せを受けてあわてて江戸へ立ち戻る元八郎。重傷をおったお庭番義兄の三太夫から襲撃者の正体を聞かされる。その襲撃者とは将軍家菩提寺寛永寺の僧侶であった。
将軍家の菩提を弔う寛永寺には京より宮家が門跡として送られてきている。その中に刺客が紛れ込んでいた。寛永寺の刺客との戦いで元八郎はすべてが二代将軍秀忠に集約されていくことを知る。
第五章
再び京へ戻った元八郎と黄泉宮の対決。黄泉宮とは織田信長によって天皇位へつくはずであった扇町天皇の皇子八十宮の末であった。皇位簒奪をもくろんだ秀忠への対抗として自らは皇位につくことなく息子の後水尾を天皇につけ、自らは朝廷の影へと沈んだ八十宮の行った徳川への脅し。
それが二条城天守台に隠されていた秘密であった。武家が現れて実に六百年、奪われることさえなく続いてきた天皇家の守護が姿をあらわす。

主な登場人物

三田村元八郎
徳川家重の見聞役。百石取りの旗本。表向きは支配勘定道中方。宝蔵陰一刀流の継承者。三十八歳。
三田村香織
元女お庭番。元八郎と婚姻し、一女をなす。手裏剣術、小太刀の名手。
三田村冴香
元八郎の娘、身軽で忍の修行をしている。
三田村由
吉宗の孫娘、伏見宮の娘分。広橋侍従の妻。
伏見宮貞建親王
桃園天皇の教育係。家重の正室の兄。元八郎の後援者。
桃園天皇
桜町天皇の皇子、桜町天皇の譲位によって即位。九歳。
徳川家重
九代将軍。幼少の熱病で言語不明瞭となるが、父吉宗に劣らぬ賢君。
吉宗の支配下にあるお庭番を嫌い、元八郎を手足として使う。
大岡出雲守忠光
家重の側用人。唯一家重の言葉を理解できる人物。忠義一途の男。
田沼意次
家重のお側御用取次。吉宗に見いだされ、幕閣をすでに手中にする。
半田小平太
伊賀組きっての遣い手。元八郎をつけねらう。
黄泉の宮
八十宮の子孫。天皇家を守るために存在する朝廷の闇。
王政復興を目指した先帝桜町天皇に刺激され、影から表へと出ようとする。

平成19年11月7日(水)
プロット文責:上田秀人
編集:管理担当

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